次元大介@医者してMUSCLE!

我、医学部再受験成功シ、医師トナル。知力ヨリモ体力。

~病畜編その6~「汝、7の7倍まで許せ。それ以上は許すな。」

罵倒され家に帰り寝る、起きる罵倒される。
そんな日々を繰り返していた。
ある日、起きて僕は心が壊れたことを自覚した。
朝食を食べても味がしない。
何も感情が湧き上がらない。
まるで心の電池を抜かれたようであった。
この感覚は何度も味わったことがある。また心が壊れたのだ。
こうして僕は生きる屍研修医として毎日病院に通うことになった。
休みたい、でも休めない。
詰め所では看護師さんたちが和気あいあいと仕事している。楽しそうだ。でも僕には楽しいと感じる力もなくなった。

自然回復を待つしかないのか。

「どこまで続くぬかるみぞ・・・」

そう僕はつぶやきながら能面のような顔をしてタバコを吸うのであった。

もう文章を書くのもつらい。誰も助けてくれない。

思えば毎日罵倒されていたのに誰も助け舟やら慰めやらをしてくれなかった。ここはそういう場所なのだ。間違えた場所に来てしまったのかもしれない。でもどこに行けばいいのかもわからない。

もう考えるのを止めよう。これが病畜の完成形なのかもしれない。
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~病畜編その⑤~「汝、7の7倍まで許せ。それ以上は許すな。」


そんなこんなしているうちに指導医が変わった。
異動した、僕を毛嫌いしていた医師に何を吹き込まれたのか知らないけど、約30分くらいの説教を毎日4回されるようになった。
勤務態度が悪い。この〜週間、全く進歩がない。それはアセスメントではないです。単なるプランです。
こんな調子で叱られる。助け舟?そんなの出してくれる人いるわけない。みんなスケープゴートがいることに心底ほっとしてて、内心ニマニマしている。
説教を受けている時にも睡眠障害の後遺症は襲ってきて、立ちながら気絶しそうになる。
僕はわからないように太ももの外側をエピペンを打つようにボールペンでグサグサと刺す。スクラブのその部分にはもう穴が空いてる。

多分、みんな楽しんでる。年増の医師がいびられてもいびられても必死で食らいついている滑稽な姿を見て。
どんだけいびってもやめないんだ。そりゃいびりがいがある。

仕事から帰るともう着替える気力もなく、ただひたすらジャックダニエルを飲む。
同僚はいない。僕は遠く離れた土地にただ一人。
話し相手すらいない。メンターであった堀木(仮)ももういない。

フローリングの床に倒れるように酔いつぶれていて、そんな僕を自動ロボがつついて起こす。また朝が来たのだ。

つらい。つらいでは済まない。しかし逃げ場もねぇ。
あの、強いと信じてた堀木(仮)でさえ90日間休んだのだ。

大学病院で大勢に隠れて研修するのが良かったかな。今からでも変えられるし、考えよう。

毎朝そんなことを考えるが、夜にはそんなのを調べる心の余裕がなくなるほど消耗しきってる。

今日もまた「それでアセスメントは?」攻撃の始まりなのだ。耐える、ボールペンで太ももを刺す、蛇行運転しながら家に帰る、酒を飲むの繰り返し。

知識がないのでアセスメントできないです。なんて口答えしようものならまた大変なことになる。叱るネタはゴロゴロ転がってるのだ。この間はそうですね。をいい間違えてそうねーになったのを小一時間叱られた。俺はアナウンサーになるためにここに来たんじゃない。

なんのために来たんだ?
立派な精神科医になるためだ。

精神科医の卵が酒浸り。世の中は滑稽なことばかりだ。CAGEスコアは3。もうなんだかなぁ。

週末は受け持ち患者さんを診て、その後特急に飛び乗る。医者はブラックだ。完全当直制なんてただのウソだ。
特急に乗ってあてもなくフラフラする。救急車のサイレンが聞こえるたびにビクッとする。
家に帰りたくない。
こんな思いで修行を終えても、僕は次来た人に同じように指導するのかもしれない。俺のときはもっときつかったぞ理論でさ。
病院は改善しようとする空気に溢れていない。院内コンプライアンス委員会?あぁ、もみ消されてるよ。途中経過も知らされていないもの。その後の事情聴取すらない。自浄作用のない、死にゆく街の病院だ。改善して何になる。確かにおっしゃるとおり。もう弁護士に頼むしかないかな。

頼んだらますます立場が悪くなる。こう言うとパワハラになるかもしれないけど、と前置き付きのパワハラが加速するだけだもの。

この数ヶ月、誰からも褒められてない。教育ってこんなものだったっけ。伸びてるのか伸びていないのかわからねぇ。暗中模索しながら僕はただただ特急に揺られている。

(病畜編はある程度フィクションです。まぁ事実がかなりだけど)

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~病畜編その④~「汝、7の7倍まで許せ。それ以上は許すな。」

そんな折に台風が来た。僕は各方面に遺書を送った。ある人は真面目に、ある人は鼻で笑ったけれど、僕は本気だった。
言葉の通じない人にも誠意を尽くして何度も避難してくださいと頼んだが、逆ギレされて塩をまかれるくらいの勢いであった。
誠意は尽くした。と僕は判断して大量の水を買い込んで一番被害が激しくなるであろう箇所に乗り込んだ。途中、休憩したSAでも道行く人々に被害がすごくなるからせめて水だけでも買ってくださいとお願いしたが、実際に買ってくれたのはたった一人。
僕は無力感を感じた。
堀木(仮)とも決別したし、僕には生きる意味もない。
my life as a dog.

こんなときに脳裏に浮かぶのはあの子の笑顔だった。

いや、まだ死なねぇぞ。

このまま死んだら研修で気を病んで死んでしまった人になるじゃないか。アイツラの思うがままなんて癪に障る。

持ち前の反逆精神だけが僕を動かす原動力だった。

わかってくれない、それがどうした。

助けたい、だから助ける。それでいいんじゃないのか

なんのために医師になったんだ。


中には義憤にかられている僕をからかって遊ぶ人もいた。
大人なので軽くあしらったが、目の前にいたら確実に。。。

結局、僕は助けたい人のためだけに医師になったんじゃない。
助けたくない人までも助けるために医師になったんだ。というのを思い出した。

何事もなくて、あとから笑われてもいい。世界がそれで平和なら、僕は甘んじて笑いものになる。

数日後、僕は部屋の中で頭を抱えていた。部屋の中には大量の水。
はははっ、なーにやってんだか。
まだ僕は生きる運命らしい。
臣くん (1)IMG_20190907_052456.jpg

まだ、免許とったからには生きろってことかな。

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~病畜編その③~「汝、7の7倍まで許せ。それ以上は許すな。」

「さよなら、堀木(仮)」


 堀木(仮)は僕のブログによく登場する、僕のメンターである。お互い留年やらなんやらしたせいで学年は違っていたが、それでも毎日のように会ってたし、なんやかんや仲が良かった。

 しかし、お互いの成長速度が変わってきてからはそうも行かなくなった。
 堀木(仮)には堀木(仮)の生き方が、僕には僕の生き方がある、という悲しい事実がだんだんと明確化されてきたのだ。
 堀木(仮)は苦労人であった。一方僕はそうでもなく、ただ生きがいのために働いている面があった。そういうところも鼻についたのであろう。だんだんとラインも耐えがちになり、今どこでどんな仕事をしているのかも聞きにくい雰囲気となってきた。

 さよならなのかな?と思ってても怖くて聞けない。いつまでも僕のメンターでいて欲しいという思いがあった。

 さて、最近大きな台風が来た。僕の住む地域を直撃するコースだ。
 病院内では非常招集もありえる、みたいな空気が流れていた。それぐらいひどい台風が来たのだ。

 さよならだけが人生だ、なんてつぶやきながら僕は海抜1.5メートルの宿舎前の荒れ狂う用水路を眺めていた。

 もし、この腐った病院で死ぬなら…彼にはちゃんと言っておかなければならない。
 尊敬してました。友達でいてくれてありがとう、と。運良く生き延びたら会いたいですね。と。

 お互いに、正直であることが友達の条件だった二人だ。返事はすぐ来た。

「了解しました。もう会えることもないでしょう。」

あのあてもなくドライブしていた日々の中では、こういう日が毎日続くんだろうなと思ってた。お互いにびわ医を出たあとも年に何回か酒飲んだりして。
 しかし、もうお別れのときが来た。
 さよならだけが人生だ。

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~病畜編その②~「汝、7の7倍まで許せ。それ以上は許すな。」

 こうして僕はぎりぎりのところを救われた。逃げ?そんなんどうでもいい。僕の人生、逃げてばかりだ。
my life as a dog.
ただ、あいつらだけは許せない。7の7倍までは許した。それ以上は許すな。

というわけで僕は証拠を集めて院内コンプライアンス委員会に訴えた。そして首謀格の看護師は首になった。
めでたしめでたし。
となるわけもなく、僕はますますいじめられるようになった。看護師全体を敵にまわしたんだもんな。そりゃそうさ。

不眠は続き、僕は立ったまま気絶するようになった。車の運転中も気絶して、車を大破させた。
こうして僕は産業医との面談を受けることとなった。

そしたらどうだ。今度は仮病扱いだ。なんなんだ、この病院は…

僕は真剣に研修中断を考え始めた。

もういいかな。
なんで僕が。そんなに歳を取ってから医学部を受け直すことが悪いのか。
なんなんだ、この田舎病院は。嫌なら採用するなよ。毒づきながらも僕は必死でニコニコと無視してくる相手に挨拶を続けていた。
虚しい。
しかし、ここで自分が相手に対して挨拶をしなくなったらそれが本当の負けだ、となんとなく感じていた。

おはよう御座います。
……

お疲れさまです。
……

田舎特有のいやらしさを煮詰めたような病院だった。



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