夜を駆ける
シャワーを浴びて、手早く準備をすると、車に乗り込む。ハンドルは冷たい。震えながら山道を駆けていく。しばらく走らないと足元を温める暖房も冷たいままだ。
途中で眠くなるのを防ぐために窓は全開だ。カチカチと歯の奥を鳴らしながら運転していく。
30分ほど山道を走って、無人の自販機コーナーにつくと、ようやく一息つける。
今日も無事、点滴がとれますように。静かにそう思いながら、コーンポタージュスープを飲む。
急がなくてはならないのはわかってる。朝の1分は夕方の30分にも相当する。でも少しだけ、心を落ち着かせる。そうしないと毎日がつらい。
点滴をとるときは手が震える。いくら数をこなしても、やはり緊張するし、本態性振戦もあるからだ。震える人に点滴なんて入れられたくないだろうな、なんて考えながら一回で成功するように慎重に針を進める。
もう祈りの言葉なんて忘れた。だけど点滴の針を進めるとき、僕は確実に祈っている。
こんな数ヶ月を送っていた。
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