僕はそんなに長く生きれない。

となると医者人生をどう生きるのか。これは僕と同じように30代で医学部に入った人なら考えることだろう。
9割の研修医は専門医過程に入るらしい。
正直、残りの1割になるのは怖い。だけど専門医過程に入っている間はあまり給料もよくないし(医者としては、の意味)、専門医を取ったといっても給料が格段に上がるわけではない。果たして専門医は十分ペイするのだろうか。寝込んでいる間は無給になるのだから、その分貯金ができるような進路を取ったほうがよいのではないだろうか。
それに・・・正直、指導という名のパワハラに合うのが怖い。スーパーローテーションの初期研修だから1ヵ月単位で済んだ。しかし後期研修となると年単位でパワハラに合う可能性もある。そうなったら多分もう助からない。10年くらいかけて実現した、医師として働くという夢が潰れてしまう。それだけは避けたい。
だけど精神科医のように薬だけではなく、交流によって人を元気にさせるような働き方をしたい。
そう悩んでいるとき、友人が訪問診療を勧めてくれた。病院に行きたくても距離的・体力的に行けない人のもとにいって治療をする働き方だ。これはいいんじゃないか、と思った。
そこからは就職あっせん業者を頼った。しかし初期研修上がりで雇ってくれるようなところはなかなか見つからなかった。それでも数件、面談をしてくれる病院があったので当直上がりを利用して何個か面談をした。
最初の病院は給料はべらぼうによかった。しかし、病棟を持たなくてクリニック単体。一人で車に乗って、採血とかも一人でするスタイル。これはしんどいな~と思った。次の病院は卒後3年にしては高給。病院の訪問診療部に属して、週4で病棟管理、残りを訪問診療するスタイル。これはいいんじゃないか、と思った。
医師として肩書のない人生を歩むのは勇気がいることだ。できれば専門医を取りたかった。しかし年齢がそれを許さない。
別に再受験をしたことを後悔しているわけではない。ストレートで医学部に入ってたらたぶん中退していただろう。
人生は戻ることができない。前に進むしかないのだ。僕はそんなに長く生きれない。残りの人生をうまく活用するしかない。
朝、レオパレスを出て川を渡る。川を渡るときが一番寒い。渡りきったら、なにかいいことあるかもしれない。そんな心の遊びをしながら毎日大病院に通っている。