~病畜編その⑤~「汝、7の7倍まで許せ。それ以上は許すな。」

そんなこんなしているうちに指導医が変わった。
異動した、僕を毛嫌いしていた医師に何を吹き込まれたのか知らないけど、約30分くらいの説教を毎日4回されるようになった。
勤務態度が悪い。この〜週間、全く進歩がない。それはアセスメントではないです。単なるプランです。
こんな調子で叱られる。助け舟?そんなの出してくれる人いるわけない。みんなスケープゴートがいることに心底ほっとしてて、内心ニマニマしている。
説教を受けている時にも睡眠障害の後遺症は襲ってきて、立ちながら気絶しそうになる。
僕はわからないように太ももの外側をエピペンを打つようにボールペンでグサグサと刺す。スクラブのその部分にはもう穴が空いてる。
多分、みんな楽しんでる。年増の医師がいびられてもいびられても必死で食らいついている滑稽な姿を見て。
どんだけいびってもやめないんだ。そりゃいびりがいがある。
仕事から帰るともう着替える気力もなく、ただひたすらジャックダニエルを飲む。
同僚はいない。僕は遠く離れた土地にただ一人。
話し相手すらいない。メンターであった堀木(仮)ももういない。
フローリングの床に倒れるように酔いつぶれていて、そんな僕を自動ロボがつついて起こす。また朝が来たのだ。
つらい。つらいでは済まない。しかし逃げ場もねぇ。
あの、強いと信じてた堀木(仮)でさえ90日間休んだのだ。
大学病院で大勢に隠れて研修するのが良かったかな。今からでも変えられるし、考えよう。
毎朝そんなことを考えるが、夜にはそんなのを調べる心の余裕がなくなるほど消耗しきってる。
今日もまた「それでアセスメントは?」攻撃の始まりなのだ。耐える、ボールペンで太ももを刺す、蛇行運転しながら家に帰る、酒を飲むの繰り返し。
知識がないのでアセスメントできないです。なんて口答えしようものならまた大変なことになる。叱るネタはゴロゴロ転がってるのだ。この間はそうですね。をいい間違えてそうねーになったのを小一時間叱られた。俺はアナウンサーになるためにここに来たんじゃない。
なんのために来たんだ?
立派な精神科医になるためだ。
精神科医の卵が酒浸り。世の中は滑稽なことばかりだ。CAGEスコアは3。もうなんだかなぁ。
週末は受け持ち患者さんを診て、その後特急に飛び乗る。医者はブラックだ。完全当直制なんてただのウソだ。
特急に乗ってあてもなくフラフラする。救急車のサイレンが聞こえるたびにビクッとする。
家に帰りたくない。
こんな思いで修行を終えても、僕は次来た人に同じように指導するのかもしれない。俺のときはもっときつかったぞ理論でさ。
病院は改善しようとする空気に溢れていない。院内コンプライアンス委員会?あぁ、もみ消されてるよ。途中経過も知らされていないもの。その後の事情聴取すらない。自浄作用のない、死にゆく街の病院だ。改善して何になる。確かにおっしゃるとおり。もう弁護士に頼むしかないかな。
頼んだらますます立場が悪くなる。こう言うとパワハラになるかもしれないけど、と前置き付きのパワハラが加速するだけだもの。
この数ヶ月、誰からも褒められてない。教育ってこんなものだったっけ。伸びてるのか伸びていないのかわからねぇ。暗中模索しながら僕はただただ特急に揺られている。
(病畜編はある程度フィクションです。まぁ事実がかなりだけど)
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